食料自給率の良問から学ぶ

食料自給率について。

食料自給率の計算には主に三種類の計算があります。

1.重量ベースの計算。
2.生産額ベースの計算。
そして、
3.カロリーベースの計算です。

日本はこの3番目のカロリーベースの計算を農水省は指標としております。





【カロリーベースの食料自給率】

カロリーベースの食料自給率(平成18年度)=
(国民一人一日当たり国産熱量[996kcal])/国民一人一日当たり供給熱量[2,548kcal]×100=39(%)


食料の重さは、米、野菜、魚、、、どれをとっても重さが異なります。重さが異なる全ての食料を足し合わせ計算するために、その食料に含まれるカロリーを用いて計算した自給率の値を「カロリーベース総合食料自給率」といいます。
カロリーベース自給率の場合、畜産物には、それぞれの飼料自給率がかけられて計算されます。
日本のカロリーベース総合食料自給率は最新値(平成22年度概算値)で39%です。
(農水省ホームページより抜粋)






先ずは下の問題を参考に。
これは2009 東京大学 前期日程入試 地理 で実際に出題された問題でです。








この入試問題は非常に良問だと思う。この問題と向き合うと色々な食料自給率の問題や農業の問題がみえてくる。
都道府県別のカロリーベースの食料自給率と、生産額ベースの自給率を比較することにより、都道府県別の食料生産品目の違いによって、日本が基準としてる食料自給率についてどのような違いが生じてくるかを問う問題です。






ここで、大前提として頭に入れて頂きたいのが、


カロリーベースの食料自給率を国の食料自給問題の指標としてる国は世界で日本だけということです。ということは、なぜ、日本だけこのような数字を使っているのか?ということになりますが、これはおいといて。この表から得られることは


カロリーベースの食料自給率=生産額ベースの自給率ではない
米の生産地はカロリーベースの食料自給率が高い
北海道はカロリーベースでは断トツの一位である
生産額ベースの上位は果樹産地が多いようだが、中でも宮崎は突出
大都市は人口が大きいために、どちらの数値も低い


この辺りでしょうか。

よって、設問(4)の答えは
上位は米の産地が多く、米は重量が小さく、炭水化物を主とするため、カロリーベースの自給率では高くなる傾向があるが、取引価格が重量ベースでは小さくなるため。




さらにポイントは北海道のカロリーベース自給率の高さです。
この数字をみて、先日、ツイッターで

『食料自給率200%を超える北海道では自給自足できる』

などといった書き込みがありましたが、これは間違いです。
そもそもこの都道府県別の食料自給率というのは、その都道府県で消費しきれない分も含むからです。







【都道府県別食料自給率計算方法】

 供給熱量ベースの都道府県別食料自給率=
1人・1日当たりの各都道府県産熱量÷1人・1日当たりの供給熱量


分母となる1 人・1日当たり供給熱量は、全国の1人・1日当たり供給熱量(平成20 年度は2,473kcal)と同じとしている。分子となる1 人・1 日当たりの各都道府県産熱量は、品目ごとに全国の国産供給熱量を当該県の生産量に応じて按分して、全品目を合計し、これを当該県の人口で割って算出している。

つまり、分母が『全国平均の国民一人当たり食料供給量』で常に計算されてるわけです。

例えば、新潟県で生産された米が他県で消費されても、カロリーベースの計算では新潟の食料自給率に含まれます。逆に、新潟でほとんど生産されてないバターなどを新潟県が使っても都道府県別の食料自給率には関係ないのです。
つまり、カロリーベースの食料自給率が100%を超えて、自給できるというのならば、その県で生産されたものしか食べてはいけないのです。しかし、現実、他県産のものは毎日の食卓で消費しておりますので、全く意味のない数字です。

こんないい加減な数字を使い、私たちの県は、町は食料自給率が高いのです。自給自足できるのです。とアピールしたりしてるのです。






さて、話を戻し、北海道の食料自給率がズバ抜けて高いのにはもう一つ理由があります。
それは酪農業に方々の割合が高いためです。酪農の飼料比率は他畜産業に比べて国産比率が高いし、飲料用生乳の輸入はゼロですからね。牛乳は自給率が100%を超えるし、カロリーも高いですから。カロリーベースの食料自給率の計算では、畜産物には、それぞれの飼料自給率がかけられて計算されます。






食料自給率に関して、一般の方が一番勘違いしているとこは、カロリーベースの計算のみの見方では家畜肥料が輸入であれば、その豚や鶏や卵は国産品であっても飼料自給率という謎の数字をかけられ、低く見積もられていること。簡単にいうと国産品の畜産物を食べれば食べるほど自給率が下がるカラクリなのです。


この飼料自給率は品目により変わっておりますが、牛の畜産業の場合、主とした飼料が飼い葉になるため、輸入トウモロコシ中心の豚や養鶏より飼料自給率が高くなる傾向があります。あとは、北海道という地理的不利も少なからずあるでしょうか。大都市への輸送費も考慮しなくてはいけなくなりますからね。


以上の理由で、北海道の食料自給率はズバ抜けて高いのです。





また、食料自給率のトリック(?)飼料自給率を考慮すると、宮崎県の食料自給率が低い理由がわかりますね。

米の生産量が少なく、飼料自給率を考慮しなければいけない、畜産業が盛んであるため。また、生産額ベースで高い値を示してるのは、果樹や畜産業で付加価値を高めた商品を確立しているためです。

よって、設問(5)の答えは

人口密度が小さく、米作など、カロリーの高い農産品を生産している地域と推測。逆に山梨や和歌山、宮崎県はカロリーは低いが付加価値の高い商品が中心。山梨県ならブドウやモモだし、和歌山県なら柑橘類や梅。宮崎県は畜産業。畜産はカロリー計算だと飼料自給率をかけられるために低くなる。





実は畜産業は農地の単位面積あたりの生産額が非常に高く、日本の農業に大変貢献し、付加価値という面からみれば、農地が少ない日本では今後の成長産業として期待されております。また、果樹栽培も産地をブランド化し、付加価値を高めた農業として成功しております。しかし、カロリーベースの食料自給率という面からのみみたら、この二つの産業は足を引っ張ってるとみなされます。これをプロパガンダといわなくてなんなのでしょう?
なかなか、官僚を多数輩出してる天下の東大の問題にしては挑戦的な問題です。







野菜ソムリエやまぎし

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